種 苗 生 産
魚や貝を卵から放流できる大きさになるまで育てることを種苗生産と言います。
栽培漁業センターでは、ヒラメやマコガレイの種苗生産を行っています。
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ヒラメの種苗生産
 卵から孵化(ふか)してすぐのヒラメの全長は約3mmです。この時にはまだ口が開いていません。口が開いてエサを食べるようになるまでの間は、お腹に持っている栄養分で生きていきます。生まれて3〜4日で口が開くと、初めてのエサとして動物プランクトンのシオミズツボワムシ(以下「ワムシ」といいます)を与えます。
 2週間ほどすると全長は6〜7mmになり、頭にはトサカ状の鰭条突起(きじょうとっき)が発生します。これはこの時期の稚魚にだけ現れるもので、着底(水槽の底に着くこと)する頃には短くなってまもなく消失します。また、尾ビレもこの頃に形成されます。
 生まれて20日頃からやや大きめの動物プランクトン、アルテミアを併用し始め、25日頃にはワムシの給餌を終了します。全長は約9mmです。この頃までは、普通の魚のように体の両側に目が付いていますが、25日頃から右目が移動し始めます。徐々に頭の上に向かって動き、やがて顔の正中線上に到達します。こうなると体を少し右側に傾けて泳ぎます。
 生まれて1か月たった頃、底が汚れまた手狭になってきた水槽から新しい水槽3面に分槽します。エサには配合飼料を加えます。配合を与えるようになると毎日の底掃除が欠かせません。右目は正中線を越えて体の左側に移動していき、着底生活に入ります。体の表面には色素も発生し始めて、50日頃には小さいながらもヒラメらしい形となります。2か月ほどで全長が30mmになり、種苗生産が終了します。
 この後の飼育は中間育成と呼んでいます。配合飼料を与え水槽を入れ替えながらさらに2ヶ月ほど飼い続けると、全長が50〜100mmに育ちます。この大きさになると、海に出ても自分でエサを捕りまた外敵からすばやく逃げることができるようになり、いよいよ放流の時期を迎えます。
 




ヒラメの卵、4分割 魚の形ができています。 卵から生まれたところ。まだ口がありません。 生まれて10日目頃。腸が回転し始めます。




生まれて20日目頃。鰭条(きじょう)が伸長しています。成魚にはありません。 生まれて30日頃。眼が動き始めています。 生まれて40日頃です。底に着いているものもいます。 着定したヒラメ。
マコガレイの種苗生産
 
 このページは、マコガレイの生産についてのお話です。
 ヒラメと姿形が似ているマコガレイですが、飼育方法や採卵方法は異なる部分があります。 採卵の仕方はヒラメが採卵水槽内で自分たちで産卵・放精し受精卵を作ってくれるのに対し マコガレイはメスとオスそれぞれのお腹から人手でしぼり出し、これを水鳥の羽で混ぜ合わせます。 卵自体もヒラメの卵と異なります。ヒラメの場合はバラバラになって水面に浮く分離浮性卵(ぶんりふせいらん)ですが マコガレイは粘着沈性卵(ねんちゃくちんせいらん)です。卵のサイズは0.8o前後で孵化するまでに10日ほどかかります。
 孵化して3〜4日経つと口が開き、腸管が開通しワムシを食べ始めます。 10日前後で腸管が回転し出し、尾鰭の始まりである鰭条原基(きじょうげんき)が出現します。 20日を過ぎると、ヒラメとは逆に左目が身体の右側に移り始め、底に付き始めます。 ヒラメは目が移動してからもすぐには底に付きませんが、マコガレイは目の移動が始まるぐらいに 着底生活に入っていきます。 底に付いてしまうと移槽がしにくくなるので、その前に大きな水槽に移し替えます。
15日前後でワムシと併用でアルテミアを給餌し、20日前後でワムシの給餌を終了します。 その後はしばらくアルテミアを給餌しますが、40日前後からコペポーダという冷凍の生物餌料を併用します。 配合餌料は60日前後から給餌します。 ヒラメよりも配合餌料を給餌する時期が遅いので、40日目まではサイズ差がなかったヒラメとマコガレイですが 60日目になると2倍ぐらいの差が出来てきます。
100日前後経つと25oぐらいになり、種苗生産が終了します。
そこから約2ヶ月、50oほどになるまで飼い続けます。  




メスのお腹から卵を絞り出します オスのお腹から精子を絞り出します それを水鳥の羽で混ぜ合わせます 採卵から5日目




孵化したばかりのマコガレイ 生まれて10日目 生まれて20日目   お腹にいっぱいアルテミアが入っています 生まれて30日目